「ありがとう」が言えなかった

私は「ありがとう」が言えませんでした。
「ありがとう」のかわりに「すみません」と言ってしまう人間でした。
何かをしていただくと、
「面倒をかけてすみません。」
「こんな私の為に手間をとらせてすみません。」
「そんな素敵なものをわざわざ買って頂いてすみません。」
書いてるだけで悲しくなってきましたが、かつての私はこんな風に思って生きていました。
そんな私が「ありがとう」と言えるようになったのは
カナダのホストファミリーのおかげです。
カナダに行く前の私は本当に自己肯定感が低かった。
自分に自信なんて全くなくて、
人に嫌われないように、迷惑を掛けないように、びくびくしながら
どうしたら役に立てるか、認められるか、
あなたなんていらないと拒絶されないようにひっしでした。
そんな私がカナダへ行き、
何もできない子供時代に戻ってしまいました。
最初は一人でバスにも乗れません。
スーパーで買い物もできません。
それどころか、自分の言いたい事を言葉にさえ出来ないのです。
何もできない子供のように、一から全てを教えてもらうしかありませんでした。
私が一番恐れていた「面倒をかける人間」になってしまいました。
そんな面倒な私に、
ホストファミリーはいっぱいの愛情で接してくれました。
片言の英語に耳を傾けてくれ、
せめてもの気持ちで家事を手伝うと”Thank you”と言って
ギューっつと抱きしめてくれる。
何もできなくても、役に立たなくても、ただそこにいるだけで愛される。
そんな経験を通して、私は受け取ってもいいんだと思えたんです。
誰かの優しさや思いやりをただ素直に受け取っていいんだ
そう思えたら自然と「ありがとう」の言葉が出てきました。
そして、「ありがとう」という言葉は「すみません」よりもずっとずっと温かいということを知りました。








