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週末、海の見えるホテルで

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梅雨入り前の晴れた週末

千葉の海へ小旅行

 

植物園へ花の写真を撮りに行くつもりが

ここ数週間の疲労こんぱいぶりのおかげで、海を見ながらのんびり過ごすことにしました

 

 

部屋の窓一面から海が見えるホテル

 

窓のすぐ近くに椅子を置いて腰かけ

何も考えることなく、寄せては消えていく波を眺める

 

ただそれだけなのに干からびた地面に大雨が降ったかのように

心が潤っていきました

 

建物は古いけれど、部屋からの眺めは抜群

そこで働く人たちも皆、親切で丁寧でした

 

夕食時

すみません、すみませんとあちこちで呼び止められ

忙しく働く人たち

 

皆、懸命に働いています

 

 

小さなことでも

素晴らしいと褒める人あり

 

小さなことに

えいえんと文句を言う人あり

 

 

ふと、ホテルで働いていた頃のことを思い出しました

 

接客業は楽しくもあり、大変な仕事だと思います

どんな仕事だってそうかもしれませんが

 

ある時、予約の手違いで部屋を用意できなかった女性がいました

ヨーロッパの国から来たというその人は、柔らかな明るい色のスカーフを巻いていました

 

せっかく遠くから来てくれたのに

楽しみにしていた旅行だっただろうに

申し訳なくて、何度も何度も詫びる私のことを

彼女はぎゅっと抱きしめました

 

 

「うまくいくことばかりじゃないから、旅は楽しいのよ。気にしないで。」

 

 

思わずポロリと涙がこぼれました

 

 

日々の忙しさでカラカラに乾いていた私の心に彼女がやさしい雨を降らせたのです

 

 

私は、自分の不甲斐なさが悔しかった

そして、彼女の寛容さを一生忘れまいと思いました

 

 

今、私は彼女のような人間に少しは近づけただろうか

うまくいかないことを楽しめるような心を持てているだろうか

懸命に働く人を労う心を持てているだろうか