私は、福島県の人里離れた山奥で生まれ育ちました。
小学校の同級生は10人
学校までの道のりは自然との遊び場でもありました。
車はたまにしか通らないので信号もありません。
目を閉じて、耳をすませば
聞こえてくるのは自然の音ばかり
虫の声、鳥の声
風に揺られる木々の音
雨が地面を打つ音
田んぼ近くを流れる小川のせせらぎ
これらの自然が生み出す「音」を「地球の歌」と表した素敵な映画を見てきました。
映画SONG OF EARTHは、ノルウェー西部の山岳地帯「オルデダーレン」に暮らす老夫婦にその娘が密着し撮影したドキュメンタリーです。
老夫婦の暮らしぶり、というよりはオルデダーレンの四季の移り変わりを通して
自然の中を歩く父親が娘に語る人生、家族、自然の美しさ、厳しさが描かれています。
ノルウェーの壮大な自然の映像と共に
地球が織りなす、さまざまな「音」を楽しめる映画です。
ゴーゴーと滝が流れ落ちる音
ポコ、ポコ、ポコと水中で空気が弾ける音
ポトン、ポトンと雨の雫が落ちる音
ギシ、ギシと氷河が軋む音
それはまさに、ソング・オブ・アース(地球の歌)でした。
まるで、子守唄を聴いているように心地よく、心がすーっと静かになります。
こんなにも美しい自然を毎日見られて
地球の歌に耳を傾けながら生きられたら、どんなに幸せだろうと思いましたが、
自然はただ美しいだけではありません。
そこで暮らす人々にとっては、自然の脅威と隣り合わせ。
時には、悲しい出来事も
自然の壮大さを知ることは同時に、
人間の小ささを知ることでもあります。
自然の脅威に抗うことなどできない。
それは、日本でもノルウェーでも同じなのだと思いました。
厳しい環境の中でも自然に敬意を払い
家族や地域に暮らす人々の幸せを祈る
謙虚で、穏やかで、愛の溢れる老夫婦の生き様を垣間見ました。
この映画に出会えてよかった。
エンドロールを見ながら、心からそう思い
そして、父に会いたくなりました。
私が子供の頃、兼業農家だった父は休みの日も忙しく、一緒に出かけた記憶は数えるほどしかありません。
いつだったか、学校の宿題で山に生えている植物について調べる機会がありました。
父は朝の農作業を終えると近くの山に連れて行ってくれて、そこに生えている様々な植物について教えてくれました。
父が自然に対して何を思っているのか、話をしたことはありませんが
遠くに見える山の山頂に雪が降ったことや
山で出くわした野生動物達のこと
春の芽吹きや、秋の実りの話
ふとした会話から、父がふるさとの自然を大切にしていることを感じます。
いつか父と行ったあの山で、一緒に地球の歌声を聞けたらいいなあと思いました。